良いな、高校野球

縁あって中3の時から4年間、密着して撮らせて頂いた野球少年達の最後の夏が終わりました。一日でも長く彼等の夏が続くことを願いながらシャッターを切っておりましたが、地区予選ベスト16で力尽きました。それでも彼等は立派でした。最初に撮らせて頂いた中3の時から比べると、体も本当に大きく逞しくなり、そしてすっかり大人の顔になりました。
僕が一番胸が熱くなったのは、中3の夏の大会で敗退した試合の途中、誰の目にも明らかな誤審に試合中なのに悔し涙を流したキャプテンが、4年後の高3の夏、誰よりも悔しい思いを抱えている試合中、ずっと「逃げるな!」「負けるな!」と声を出し続けていたことです。
当然のことながら、誤審だろうがなんだろうが、審判が下した結果は覆ることはありません。そのことを引きずる幼なさがあった4年前と違い、それを受け止め仲間を鼓舞する姿、それこそが野球を通じて彼が成長した証であり、「高校野球」で一番大事なことなのではないかと思うのです。

旅館の片隅で生まれ育ったので、子供の頃から春と夏は自分が住んでいる場所に高校球児がいました。お兄さんのようい慕い、憧れの対象でしたが、いつの頃からか、勝利史上主義の旗のもと、僕が知っているお兄さん達はいなくなってしまったような気がします。少なからず野球が大好きだった子供の頃の僕は、そういう経験から野球を卒業したのかもしれません。

勿論、高校球児全てがそういう姿勢な訳ではなく、多くは「部活」として仲間と共に一日でも長く野球がしたいと思って取り組んでいることと思います。

今回、彼等の高校三年間を追って、高校野球本来の魅力に触れることが出来ました。そういう意味で、仕事とはいえ、彼等に心から感謝しています。

試合を撮りに行ってはいても、やはり最後の最後は肉眼で見てしまいました。最後のバッターのK君は中学の時から元気一杯で、高校に入って補欠に回ってりしながら、最後の夏にレギュラーを掴んだ子なので、僕なりに少しならずとも思い入れがあって、内野ゴロを打って一塁に向かって走り、最後はヘッドスライディングでアウトのコールを聞き、ベースに顔をうずめる・・・写真を撮らなければいけない場面ではありましたが、僕は撮れなかったです。それこそが高校野球の魅力なのではないかと思います。

少し斜めから見ていた高校野球に対し、最後の挨拶をスタンドから眺めながら、思わず「良いな、高校野球って」という言葉を呟いていました。

彼等がこの先野球を続けるかどうかわかりませんが、彼等の未来が明るく輝くものであることを願ってやみません。

感動をありがとう。

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